あなただけを見つめてる。



戸惑いながらも、しかたなく私はその場で向日くんを待っていると。


戻ってきた向日くんの手には鞄が二つあることに気付いた。



「お待たせ。じゃ、葉月帰ろうぜ」


「え?帰るって、みんなは!?」


「そろそろお開きにしようと思ってたとこだったし、あとのことは陸に頼んどいたから大丈夫」


「……!でもっ、私なら本当に平気だよ!?」



っていうか、そんなに私、具合悪そうに見えるの!?



「無理すんなって。葉月んちってどこ?家まで送ってく」


「えっ!?いいよっ、私ならひとりで帰れるしっ!」



それに、こんなこと根本さんたちにバレたら、また何を言われるかわからない。



「あれ?葉月はまだわかんないの?俺が一度言い出したら聞かないってこと」


「……えっ?」


「なんなら、またお姫様抱っこして連れて帰ってもいいんだけど?」



そういうと、ニヤッと悪戯に笑う向日くん。



「……そっ、それは絶対に困るっ!」


「ふっ。だろ?なら、素直に俺の言うこと聞いて帰ったほうがいいんじゃないの?」


「……っ」



向日くんて、けっこう強引だ……。



私は渋々、向日くんとお店の外に出ると、夜道を歩きだした。
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