相対ハート
Facing each other and reciprocity.
室内の壁掛け時計に目をやると、その指針は終業時刻を指し示していた。
たまには定時で帰ろうと、2冊のファイルを両腕で抱え込みながら立ち上がり、同僚にファイルを片付けながらそのまま帰るという事を伝え、私は部署を後にした。
廊下に出ると、ファイルを持つ手に思わず力が入ってしまう。
部署内より、設定温度が少し低い様だ。
首筋から肩にかけてぞわぞわと寒さが広がっていくのを感じながら『はぁー…』と息を吐き出してみる。
屋外程冷えているわけでも無いのに、
白い息が出るわけでも無いのに。
でも、私のココロの中は…
淋しい溜め息の【白】で立ち込めていた。
彼に、2ヶ月も会えずにいたからだ。
海外出張だなんていつもの事だったけれど、大概1週間程度で帰国していたというのに。
『帰国するまでに、時間がかかりそうだ。』
というメールが2週間前に届いて、それ以降メールは届いていない…。
私は私で、彼への返信に
『分かった。大変だろうけれど頑張ってね。』
としか送らずに…。
私は、何でこんなにも…可愛く無いのだろう。
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