相対ハート
「どうしたの?…泣いてるの?」
と問い掛けられて、首を横に振ろうと思ってはみたけれど、こんな顔をしながら泣いていないだなんて言えない。
質問に対しての答えを言わず、私は彼の背に腕を回した。
「寂しいって思ってくれていたの?俺も、同じ気持ちでいたよ。」
『キミはメール不精だし、思っている事を素直に言ってはくれないけどね。』
と付け足してそう言うと、ふふっと笑い声を漏らしながら私の髪を優しく撫で下ろす。
私と同じ気持ちでいてくれた彼に、少しずつ気持ちが満たされていった。
『寂しい』
『会いたい』
『声を聞きたい』
『触れたい』
『気持ちを確かめ合いたい』
その全ての気持ちを、きっと彼は同じ様に感じてくれていたんだろう。
気持ちの通じ合っている彼と、相対しながら二人で愛情を育んでいくんだ。
彼の腕の中でほっこりとした気持ちを感じていると、
『あの…さ?ギアチェンジしてもいいかな?』
と言いながら、彼は私の背を資料室のドアに押し付けた。