キミのその嘘つきな、
作業衣の紺色の甚平に腰巻きエプロンを着た、和菓子職人見習いの幹太。物心ついた時から無口で、しかめっ面で、無表情で、威圧的なオーラを放っていた。
普通にしていれば、 くっきりした二重に、男らしいスッとした眉毛、高い鼻、ラグビー部で引き締まった身体。
そこそこモテるはずなのに浮いた話も出てこない。
恋愛に奥手なのだろうか?
だから私と彼を祝福するのが照れ臭い?
それか私みたいな馬鹿そうな女と大事な幼馴染みが結婚なんて虫酸が走るとか?
無表情でレジを打つ幹太…心を読み取れないかと、腕組みしながら睨み付けてみる。
そんな無意味な空気の中、調理場の暖簾が揺れた。
「桔梗ちゃん、新作の栗餡なんだが試食してくれないかな」
暖簾から顔を出したのは、幹太の父親でここの和菓子職人。幹太の見習い作業衣とは違い、ちゃんとした白い作業衣を着ている。
おじさんは甘く作りたてホクホクの栗餡を私の手のひらにスプーンで乗せた。
「モンブラン餅を作ろうかと思ったんだけど」
「うーーん。美味しい!」