いっぱい好きになってもらうから。
「うん。惜しかったね、お疲れ様、次も応援に行くからねって言っておいて」
「ありがとう。こうちゃん、アオイ、またね」

　そう言うと、メグは席を立ち上がって、選手控え室のある方へと歩いて行く。

　その背中を見送ってから、私はコウタの方を見た。

「じゃ、タツキのことはメグに任せて、私たちは帰ろっか」　
「そうだな」

　私とコウタは肩を落とすファンに混じって、スタジアムの出口を出た。スタジアムの壁沿いを、最寄り駅の方に向かって歩く。

　私は歩きながらコウタをちらりと見上げた。彼はどこか寂しそうな悲しそうな表情をしている。

　それもそうかな。

　コウタも高校生までは、タツキと同じユースチームでプレーをしていた。でも、練習試合中、相手チームのスライディングを受けて倒れたときに右膝の靭帯を切ってしまって、プロになることを諦めたのだ。それでも懸命のリハビリを経て、子どもサッカーチームのコーチという形で今でもサッカーをしているし、自分が叶えられなかった夢を実現しているタツキとも友達づきあいを続けている。

　きっと、コウタもあのピッチを走り回りたかったんだろうな。

　そう思うと、なんだか私も切なくなってきた。北風が身に染みて余計に涙がにじみそうになり、ふっと視線を前に向けると、コウタが立ち止まった。

「どうしたの？」
< 4 / 9 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop