ドライアイス
「吉澤くんとは、遊んだりしてるの?」


「この前映画には行った。でも後は昼休憩にご飯食べたり、一緒に帰ったりするくらいで」



興味深そうに相槌をうつ母。


楽しいのだろうか。



「もうすぐ夏休みね」



と思っていると、いきなりの話題変更。


不意討ちだ。



「読書ばかりじゃなくて、ちゃんと外の世界にも目を向けたら?じゃないと勿体ないわよ」



結局母も透と同じようなことを言うのか。


それが顔に出ていたのか、苦笑しながら口を開いた。



「巴も今年で高二。来年は受験生なのよ?」



その言葉にはっとする。



「吉澤くんでもそうじゃなくてもいい。ちゃんと高校生活、満喫しなさいね?」



それが今回一番言いたかったことか。


母は言い終わると、ケーキとコーヒーの食器を洗いに行く。


私はすっかり冷めてしまった紅茶と、ケーキの残りを食べながら、物思いに更けた。




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