小悪魔的な君
…正直、それが簡単に出来てたら今頃こんな事になっていない訳で。
旦那さんがいる友達をこんな時間に呼び出して愚痴に付き合わせたりしてない訳で。
しかも、誕生日に…!
「辛い、絶望的…っ」
「え、あたし励ましてたよね?」
「もういい!飲む!明日休みだもん!」
「いや終電は?あんたあたしと違う電車だよね?」
「いいの!タクシーで帰るから!」
「あー、出たよタクシー。ダメダメ、すでに飲み過ぎてんだからもうダメ!」
そして「帰るよ、今日は奢ってあげるから!」なんて言う琴乃に引きずられるように店を出て、私は最終電車の最寄駅にて降車後、トボトボと夜道を自宅に向かって歩いている。
はぁ…もう何なんだろう。
どうせ帰ったって待ってるのは一人暮らしの狭い部屋。夜道と変わりない真っ暗な部屋がすっかり冷え切った空気と共に私を迎えるんだ、いつものように。
…辛い。
辛過ぎる、将来の孤独死が、じゃない。もう今の孤独感で死んでしまう。
寂しいし辛いし怖い。私の人生何も無い。これからだって辛い事しか待ってない…っ
やたらゆるくなった涙腺から、涙がどんどん込み上げてくる。
酔っ払って大泣きしながら一人で夜道を歩くなんて…そんなの、なんて最低な誕生日なんだ。もう最悪だ。