小悪魔的な君
「えっ…いや、なんで、」
「昨日送ったらそのまま寝ちゃったからさ、合い鍵借りて帰ったんだ」
「ね、寝ちゃったって…だって私、」
「うん。急に脱ぎだしてビックリした。そうゆー事かなと思ったよ」
「⁈」
思わず、ギョッとする私。でもそんな私に彼は微笑みながら「結構スタイル良いよね、お姉さん」なんて、サラリと追い討ちをかけてきて…って、そんな…あ、あり得ない!
「か、帰って下さい!」
「…ん?」
「いや、もうなんか私可笑しくて、だからその、申し訳無いんですけど忘れて貰って、今回は無かった事に…」
「…へぇ?」
その瞬間、サッと微笑みが彼の顔から消える。そして驚く間もなく一歩、また一歩と彼は私との距離を詰めてきて、妙な緊張感に私は距離を取ろうと後ずさるのだけど…
「っ、」
背中に感じたのは、自室の壁。追いやられたと分かった瞬間、反射的に他へ逃がれようとする。…が、
「ダメだよ、お姉さん」
ダンッと、壁につかれた彼の手により最後の退路は絶たれてしまった。
状況について行けず、固まる私。でも彼は更に覆い被さるように距離を詰めてきて…それはもう、吐息がかかるぐらいの距離。お互いの体温を感じられるくらいの距離。
「もう僕の物なんだから…逃がさないよ」
そう耳元で囁いた彼は、また微笑みを浮かべた。でもそれは今までとは全く違う、可愛い顔した彼とは不釣り合いとも思える物で。
ドキリと、心臓が反応する。
そんな不敵にイヤらしく微笑んだ彼に、私はすっかり囚われてしまった。可愛くて意地悪でやたらと魅力的なーー小悪魔的な、彼の手に。
「これからよろしくね、すみれさん」