カクテル・キス
「……ふう」
誰にも聞こえないように小さく息を吐く。
トイレに入ると
外の喧騒が一気に遠ざかった。
このサークル、
春の新歓の時は
そんなに飲ませようとしないところが気に入って
入ったんだけどな。
あの時は確か、
森山(もりやま)さんが話しかけてくれて……。
――森山さんは入学当時
校内を歩いているときに
最初に声をかけてくれた人だった。
春の陽気と新しい生活の高揚感。
それに今まで知る男子とは違う、大人な先輩。
雰囲気に流されるまま新歓に参加した私を
優しく構ってくれた。