カクテル・キス



「……よ、酔ってません」


距離に戸惑って
うまく声が出ない。

緊張すると、
声ってこんなに震えるものなんだ。


答えて彼の顔をのぞく。


恥ずかしくて顔が熱い。

こころなしか、目も潤んできて。


「だけど、顔、真っ赤だよ……?」


それは……

あなたとの距離に、緊張して。


こんなこと、言えない。


「お酒、飲んだんでしょ?」


黙ったままの私に

彼はそう言って、
少し意地悪そうに口角を上げる。


触れられている背中が熱い。


頭すぐ横にのびる腕からも

熱が伝わってきそう。


どうしよう、
恥ずかしすぎて離れたいけど
まだ触れていたい。


顔を上げて見つめる、潤んだ彼の唇が

小さく動く。




「キス、すればわかるか」




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