カクテル・キス



何も考えられない。


ただ近づいてくるのが見える唇を、

瞳を、髪の毛を、

瞬きできずにとらえる。


ふわっと息が
鼻にかかってくすぐったい。


あ、触れる。


そう思ったとき、

ぱっと変わった視界と

はっとした顔の先輩。


「あああ愛華ちゃん!!」


「は、はいっ!!」


名前を呼ばれて咄嗟に返事をする。


「よ、避けろよー!!」


背中にまわされていた手が離れ、

そのままその手で顔を覆う先輩。




< 7 / 9 >

この作品をシェア

pagetop