カクテル・キス



急に変わった雰囲気に

視界がチカチカ。


戸惑っていると、

彼のうなだれた頭が耳元まで移動して、


「酔った男に隙見せたらダメだろ……」


甘く、囁く。


ふっと顔が離れた。


先輩は困ったように笑うと

壁についていた手もどかし、

私に背中を向けた。


そのまま、

通路の奥の男性トイレへ足を進める。


私はあのまま、キスされてもよかったのに。


なんて考えてる、
自分の胸の動きがはっきりわかる。


お酒を飲みたいとは思わないけど、


アルコールって、どんな味なんだろう、なんて。





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