恋歌─れんか─
艶
此の花は 君へ最期の 花でなし 花にも似たる 曙の雪
(この花は、私から貴女へ最期に贈る花にさせていただきます。花にも似ている、曙の雪を)
橘の 園にや我が身 入りにけむ 雪と見紛ふ 花散里よ
(橘が咲き誇る園に迷い込んでしまったようだ。そこでは雪と見紛う花散里の景色が広がっていた)
葛の葉の うらめし者を 思ふ時 鵺と見紛ふ 我が心かな
(憎くて仕方がない奴のことを思っている時、私の心は鵺と見紛うくらい醜くなっている)
夜を照らす 光を隠し 世を覆ふ 闇のあはれを 今宵知りぬる
(夜を照らしてくれる月の光を隠して、世の中を覆っている闇。その美しさを今宵、初めて知った)
行き暮れて 梅が枝下を 宿とせば 鶯明日の 友とならまし
(旅の途中、梅の枝下を宿としたら、鶯は明日私の友となってくれるだろう)