10年越しのコクハク
「大きなビル……」

取引先の会社は、中心部に位置するオフィスビルの中にある。

一応、住所の書かれた資料を持たされたけど、こんな大手の企業はイヤでも場所を知っていて、まるで必要がない。

さっそくエレベーターに乗り、オフィスまで行くと、受付の女性が手際良く応接室へ案内してくれた。

小さな部屋で、レザーの黒色ソファーと、テーブルが置かれただけのシンプルな部屋だ。

「どんな人なんだろ」

若い人って言ってたから、年齢は近いんだろうけど、それだけじゃ相性がいいかは分からない。

だから、今日の初対面はとても重要なのだ。

それから5分くらい経ったところで、ドアがノックされる音が聞こえる。

来た!!

姿勢を正し、営業スマイルを浮かべて……。

「はい」

我ながら、感じのいい返事にウットリする。

だけど、そんな自己陶酔も束の間、入ってきた営業マンを見て驚きで目を丸くした。

「和樹!?何でここに!?」
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