10年越しのコクハク
そこには間違いなく、和樹が立っている。

10年前より、ずっと大人びているけど、背が高くガッシリとした肩幅なんかは、あの頃から変わらない。

濃いグレーのスーツに身を包んでいると、高校生の頃には派手に見えていた和樹のルックスも、垢抜けて見えるから不思議だ。

そんな和樹も、わたしを目の前に驚きを隠さなかった。

「美希か……?かなり大人っぽくなってたから、一瞬分からなかったけど、声はまんまだな。変わってない」

少しぎこちない笑顔を作った和樹は、ペンと資料をテーブルに置き、わたしに座る様に促した。

「和樹こそ、すっかりオトナの男じゃん……。高校生の頃とはだいぶ違う」

「当たり前だろ?もう10年も会ってないんだから」

ようやく笑い声が出てきた和樹に、わたしは胸のときめきを抑えられない。

だって、目の前にいる人は、ただの男友達じゃない。

わたしの好きな人だから。
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