10年越しのコクハク
吸い込まれそうな和樹の瞳を、そらすだけで精一杯。

「ふぅん、そう」

と、気の無い返事を返したわたしは、この変な空気を変えるかの様に商談の話を進めた。

和樹も意外なくらいに話に乗り、あっという間に用事は終わったのだった。

「美希、すっかりデキる女じゃないか。高校生の頃の、小生意気なイメージとはだいぶ違うな」

書類を整理しながら、和樹は苦笑いしている。

「何よ、それ。和樹こそ、すっかりビジネスマンて感じ」

10年振りの再会なのに、普通に話しかけられて、こっちもあの頃と同じ、可愛げのない返し方をしてしまう。

すると、和樹はケラケラと笑ったのだった。

調子のいい笑い方は、変わってない。
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