10年越しのコクハク
「ビジネスマンって感じなら、オレとしては褒め言葉だけどな。高校生の頃なんて、いつもガキ扱いだったもんなぁ?」

うっ……、それを言われると痛い。

あの頃から子供ぽいわたしは、和樹に憎まれ口しか叩けなかったから。

「よく覚えてるね、そんなこと」

ほら、やっぱりそんなことしか言えない。

「覚えてるよ。オレが何の為に、こっちへ帰ってきたと思ってるんだよ」

「えっ?」

本気か冗談か、和樹は急に真顔になった。

「な、何の為?あ、そういえば和樹をSNSで見かけたよ。だから、今どうしてるんだろうって、ずっと気になって……」

と言ったところで、思わず手で口を覆った。

今さら、和樹に告白なんて出来ない。

だから、気にしてるなんて知られちゃマズイ。

すると、和樹がテーブル越しに手を伸ばし、わたしの腕を掴んだ。

そして、自然と手が口から離れる。

「美希は、誤魔化すのが下手くそ。さっきも話をそらして、仕事の話題に変えたろ?バレバレだよ」

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