て・そ・ら
見てない。
きっと、彼はつっぷして寝ている。
見てない。
絶対、横内は寝てるはず――――――――――
そう思うなら振り返りなさいよ、そういう声が自分の頭の中でガンガン怒鳴っている。だけどそれにはかなりの勇気が必要だった。だからあたしは、担任が入ってきて号令をかけ、皆が立ち上がる騒音に紛れてちらっとだけ、振り返ってみたのだ。
あくまでも立つ過程で後ろを見ただけです、なイメージで。
ちらっと一瞬だけ。
・・・ほら、横内は眠っ――――――――――――――て、なかった。
バチっと音がしたかと思った。
椅子を引いて立ち上がるクラスメイトの体をぬって、教室の端と端で、あたしの視線は横内のそれと出会ってしまったのだ。
・・・・・・・わあ!
慌てて前を向いた。
だけど瞼の裏に、まだ残像が残っていた。
立ち上がる皆に従わず、自席に座ったままで肘をついて顔を片手に乗っけた横内の姿を。
眠ってない、はっきりと開かれた彼の一重の両目を。
・・・見ちゃった。
朝礼とその後に続いた1限目、控えめに言って、あたしの脳みそは沸騰状態だった。