て・そ・ら
久しぶりに話す彼の背が伸びているとか、声がまっすぐあたしに向かってるとか、実は二人っきりではないか!という事実とか、色んなものがとても嬉しかった。
「こんな寒いのに、平気なの、佐伯は?」
ちらっとだけあたしを見て、横内がそういった。あたしはポケットからカイロを出して振ってみせる。
「手袋にカイロも準備してくるので。それに購買で温かい飲み物も!顔が寒くて痛いけどね~」
「ああ、風が当たるとこは痛いよな、やっぱ」
「うん。厳しい風だよね、真冬のさ」
ニコニコと答えてしまう。さっきまでは確かに凍えるような気持ちだった。だけどもう大丈夫。今のあたしは、全身でぽっかぽかだ!
寒い寒いと数回言ってから、横内はぶるっと体を震わせる。ポケットの中のカイロ、貸そうか?そう言いたかったけど、勇気のないあたしの口から言葉は出なかった。
これ、あったかいよ。使う?よかったら。・・・そう言いたい。ううー、どうしてこんなに難しいのよ!もごもごと口の中で言葉を転がして、あたしはしかめっ面をした。
その時、マフラーに半分ほど顔を埋めて、横内がぼそっと言った。
「・・・よく来てるよな、ここに。下からいつも見てた」
――――――――――――へっ!?
言葉の意味を理解して、それと同時にあたしの体は凝固する。・・・見てた。見てた!?って下からって、えええー、まさか気づかれてた!?
「えっと・・・その、夕日が・・・」
「うん。そんな話したの俺だから、来てるかなーって見上げてたんだ。そしたら結構な確率でいるからさ、寒くないのかなって思ってた」