て・そ・ら


 うわー、うわー、うわあああああー!!

 一気に顔が熱くなったのが判った。ばれてたんだ、ここにいるのが。それも、見られてたんだ!こっそり覗き見してたつもりだったのに!

 うぎゃあ、それって恥かしい~!へ、変な顔とかしてなかったでしょうか・・・鼻かんだりとか、欠伸とか。ううう・・・。

「・・・さ、寒いのは大丈夫、だった、けど」

 言葉がうまく喉から出てこない。ダラダラと冷や汗をかいたような状態で、あたしは無意識にフェンスを握り締めていた。

「ここで何みてんだ?長い時間、いつも」

「えっ!?いやあ、あの・・・だから、空とか」

 それに君とか君とか君とか。

「ら、来年のね、絵画展にはね、そのー、夕焼け空をって」

 心の中の声を消して、わたわたと何とかそう続ける。君を見てました、なんて言葉、いえるくらいならカイロを貸せている。

 ああ、そっか。そう言って横内が納得したように頷く。

 その時、ぼんやりと周囲が明るくなってきたのに気がついた。

「夕日になるな」

 横内の小さな声がした。

 さっきまでは確かにお昼の太陽の明るさがあったのに、いつの間にやらお日様は赤くそまりつつある。空が全体的にピンク色を帯びて、キラキラと光線のようなものが出ているようだった。


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