て・そ・ら


 心の中で相槌を打って考え込んでいたら相手を不安にさせてしまったらしい。横内がしっかりとこちらへ顔をむけて、首を傾げながら言った。

「・・・って、佐伯さん、聞いてる?」

「へ?ええ、ああ、いや、はいはい、うんうん、聞いてるよ~、ちゃんと」

 慌てたあたしの返事が面白かったようで、横内はきゅっと口元を上げて笑った。くく、と小さな声が聞こえる。

「佐伯さん、てさ」

「はい?」

 笑われたことにちょっとばかり体温の上昇を感じたあたしは、隣を見れなかった。だから、彼の言葉のトーンだけを聞いていた。

「話すと結構面白い人、なんだな」

 それは、確かに笑っているような声や温度だった。

 あたしはカーッと顔が熱くなるのを感じて押し黙る。わ、わ、笑われちゃったよ、あのおばさんみたいな返答に。うわうわ~、もう、もう!


 ―――――――話すと結構面白い人、なんだな―――――――――


 その時、車内アナウンスに気がついた。それとほぼ同時にガタンと大きく揺れて、電車が速度を落としだす。あ、止まるの?あたしが咄嗟に手を付いたドアの窓の外、ここは乗り換えの駅だと判った。

 横からのびて来た手にぐいっと腕を引っ張られて、ハッとする。

 自分はつり革に捕まりながら、横内があたしの腕を引いていた。

「ドア開く。危ない」

「あ、はい―――――――」


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