て・そ・ら

・逃げた先の屋上で



 何とか苦しい修行のような歌の練習を終えて、本日は解散となる。時計を見るともう4時半過ぎだった。

 ガックリ・・・。あたしは肩を落として鞄を肩にかける。

 もう11月で夕日も早くなっているのだ。お日様の隠れる時間って案外早いんだなあ!と思うくらい、あの素敵なオレンジタイムは駆け足で去っていってしまう。

 もうすでに窓の外は暗くなってきつつある。今から電車に急いでも、好きな光景はみれないじゃんよー。ぶーぶー。

 だけど、部活にいくのもな・・・。と、今から練習に参加って運動部へと駆け出すクラスメイトを見てしまった。

 そこで、バチッと横内と目があったのは本当に、ただの偶然だ。

 ・・・・あ、目が合っちゃった。

 あたしはいきなり緊張してどうすればいいか判らなくなる。そのまま視線を外して教室から出て行くと思われた横内が、何か思いついた顔でこっちに足を踏み出しかけた。

 その時、飯森さんの声が彼を捕まえた。

「ちょーっと寺坂君と横内君、待ってくれる?」

「え」

「うお?何だよ飯森~。俺これからクラブいかねーと・・・」

 二人が嫌そうに彼女に向き直ると、学級委員で文化祭実行委員で合唱部の飯森さんが、ふんぞり返って言った。

「あなた達は特訓がいると思うの。竹崎さんも協力してくれるっていうから、今から練習よ!」

 びっくりした顔の横内と、ええー!?と絶叫する寺坂。あたしは、うわあ、と思ってその場で固まっていた。

 ・・・特訓、今から?ええー・・・ちょっとそれは勘弁・・・。


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