て・そ・ら
驚いたあたしが目を丸くしているのと、音楽室の中から飯森さんの怒声がしたのが同じタイミングだった。
「ちょっと横内くーんっ!?」
ほら、走れって!そう言って横内が横を通り過ぎていく。あたしは、え?と言いながらもつられるように走り出した。
え、え?あれあれ?どこにいくの、ちょっと―――――――
バタバタと走って、最初の曲がり角で彼がパッと曲がる。あたしもそのまま曲がったけれど、そこは屋上へ通じる階段があるだけだと知っていた。
ええと・・・あれ?屋上にいくの、横内?
考えがまとまらない間に横内は階段を2段飛ばしで上がっていく。あたしはクラスの眠りん坊がこれほど活動しているのを目の当たりにしたのが初めてだった。
走ってる!それに・・・早いいいいいい~!!
うお、さすが運動部!やっぱり足も速いの?!あたしはもう息をきらしながら何とか階段を駆け上がっていく。ってかどうしてあたしが走ってるんだろう。何も悪いことしてないのに~!
バタン!とドアを開けて、屋上に飛び出した横内が、あたしがドアを通り抜けたのを確認してからドアを乱暴に閉めた。
はあ、はあ、と二人の荒い呼吸が重なっていく。
上半身を折り曲げてドアにもたれかかった横内が、あたしと目が合うと、にっと笑った。
「・・・悪ぃな、佐伯。飯森達が後ろ向いてる間に逃げてきたから、あのままだとお前も捕まると思ってさ」
あははは、と声にまで出して笑っている。
・・・いやいやいや。あたしは困った顔をしながら何とか息を整えた。笑ってる場合じゃないでしょう、もう・・・。飯森さん怒ってるよ、きっと。
「大丈夫、なの?それって」