て・そ・ら


「・・・消えちゃったー」

 あたしはがっかりして肩を落とす。・・・ああ、終わっちゃった・・・。滅多に見れない凄い光景だったのに。次にこんな凄い夜の始まりを見られるのは、一体いつなんだろうって思うくらいに凄かったのに。

 隣から、笑う気配がしてハッとした。

 ・・・・あ!!ってかあたし、今横内と一緒にいるんだった~っ!!

 ちょっと忘れてたよ!パッと横を見ると、彼は目に笑いを浮かべたままであたしを見ている。

 ―――――――――ぎゃあ!

「・・・・な、何?」

 恥かしくなって下を向いて聞くと、今度はあははは、と笑い声が飛んできた。

「いやあ、夕焼けファンって本当だったんだな、と思って。すごい陶酔した顔だった。佐伯って午後4時半の女って呼ばれてるって聞いたけど、それって夕焼けに関係あるんだろ?」

 ぶっ・・・。

 あたしは思わず両手で顔を押さえた。ぱしって音がして、横内がびっくりした顔をしたのが視界の端にうつる。

「・・・佐伯、何してんの?」

「いやいやいやいやいや!ほら、あのね、ええーっと・・・どうしてそのあだ名をそなたが知っているのでござるかと思って!」

 あ、ダメだ。興奮したあまりに変な口調になってしまった!

 このままでは笑われる!と思ったら、やっぱり予想通りに大きな笑い声が聞こえてきた。

 あははははは!と横内が笑って、もうほとんど暗くなりかけている中、明るい顔であたしを見ている。


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