て・そ・ら
「ほんと、静かなようで実はおもしれーんだなあ、その慌てたときに言うことがさ。あはははは」
「・・・」
「ござるって!あはははは!」
くっそう。ものすごい恥かしいですぜ!あたしは長い髪で視界を遮断して、落ち着こうと深呼吸を繰り返す。どくどくんと心臓は相変わらずうるさいけど、それが笑われるような態度をみせてしまって恥かしいからか横内の隣で話せて嬉しいからなのかが判断できなった。
まだ結構な勢いで笑う横内に向き直る。それから、鳴り出した下校のチャイムに負けない声で言った。
「夕焼けをね、見るのが好きだから!」
「え?」
横内が笑うのを止めて体を起こした。もう、お腹かかえて笑うほどのことかいな!
ちょっとムカついたけど、でも横内なのだ。今あたしの前で笑っているのは。だから、秘密を教えることにした。あたしの秘密。大事にしてきて、誰にも言わなかった夕方の時間のことを。
「学校をね、4時半くらいに出たらね、電車の車輌一つを一人じめできて、しかも凄ーい夕日が見られるの。だから大体いつでも4時半には学校を出ちゃうの!それで美術部のメンバーはあたしをそう呼ぶんだけど・・・横内君、誰に聞いたの?」
すっかりと消えてしまった太陽と鳴り響く下校のチャイム。5時になったのだ。
あたしは鞄を胸元に抱えて彼を促す。屋上から出ないと、先生方が見回りにきて追い出されてしまう。
やっとそれに気がついたらしい横内が頷いて、自分の鞄を手に取る。それから歩きながら謎解きをしてくれた。
「えーっと、ほら、3組の菊池。委員会が一緒で話すことがあって」