て・そ・ら


 ・・・菊池。――――――――って優実かーいっ!!

 ドアをあけながらずっこけそうになった。そういえば、ちょっと待って!横内って何委員会なのよ?

「え・・・・。よ、横内君って委員会何?」

「ん?放送部。だから当番の時は、昼の放送で菊池に会う」

 マイ・ガー!

 眩暈がするわ~・・・。本当に眩暈を感じてあたしは咄嗟に階段のてすりにしがみついた。・・・そうか、放送部が一緒なんだ、優実ったら!それで喋るから、横内、っていうか男子テニス部の情報を仕入れることが出来たんだ!うわー、全然全くちっとも思い当たらなかったわ~!

「え、佐伯大丈夫?」

 階段にしがみつくあたしを追い越しながら、横内が振り返る。

「え?うん、はいはいはい。大丈夫でござる」

 もう笑ってくれ、盛大に。あたしは呆けた頭でそう思って、一人で納得していた。

 そうか、優実が横内にあたりをつけたのはその辺なのかもしれない。あたしの気になる人、それが横内かもしれないって思ったから、話をするようにしてたのかも――――――――――

 もう爆笑ではなかったけれどやはり笑っている横内に向き直って、あたしは恐る恐る聞いた。

「あのー・・・優実は・・・ええと菊池さんは他にも何か言ってた?」

「ん?」

「いや、だから、あたしのそのあだ名以外に、ってことで・・・」

 いいや、そう横内から返事が来たから、あたしは心底ほっとした。だってあの行動的な優実のことだ。ガンガン情報を流しまくってあたしの気持ちも代弁しまくって、もういっとけゴーゴー状態にしてしまうことくらいやりかねない。

 そんな恥かしいことになったら死ねるよ、うん。


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