て・そ・ら
・お母さんのご命令
綺麗な夕焼けは、学校の屋上が一番。
あたし、何でそれに気がつかなかったんだろう。
山の上のそれも一番上に建つこの学校のコの字の一面、それは真正面から西日があたり、風もぶつかれば光も入りまくりというロケーションなのだった。
その4階、特別教室ばかりで4部屋分しかない4階の一室にある美術部。そこはいつでも夕日の強烈な光の被害を受ける場所であって、恩恵だとか絶景だとか、その点にはフォーカスがあてられていなかったのだ。いつでも太陽が眩しいからと授業中もカーテンがしめてあるし、風が入るからと窓もしめてある。そこが、美術部が活動する4階の一室だった。
だから思いつかなかったのだ。
そうだよねえ~・・・屋上か、なるほど!
本当に目からうろこ状態だった。思わず百科事典でその言葉を調べてしまったほどに、しっくりとくる言葉だった。
電車が街へと下りていく、あの飛んでるような感覚も勿論好きだ。
大体電車をひとりじめできるってところにもかなりの魅力を感じている。
だけど。
だけど―――――――――――――
横内と一緒に見た一日の終わりの風景は、あたしの心に深く深く染み込んでしまった。
あの景色がもう一度みたいなら、そうよね、屋上に上がればいいんだ!って。
理科部という、主に実験ばかりやっているクラブがうちの高校にはあって、ちょくちょく使うということでコの字になった校舎の3階、一番端の階段からは屋上というか、ルーフテラスのようになった場所に上がることが出来る。そこは一日中生徒に解放されていて、授業中や放課後などには先生や用務員さんがサボり防止のために見回りにくるけれど、ほとんど人気はないと言ってよかった。