て・そ・ら
だからあたしは、学校をすぐに出なくては電車での夕日は見れないけれど、時間が早すぎると車輌のひとりじめは出来なくなる冬の間、屋上で夕焼けを楽しむことにしたのだ。
それからちょっと部活に顔を出して、皆と一緒に帰る。
ううーん、ナイスアイディア!
文化祭まではクラスのコーラス練習で拘束されたけど、文化祭が終わってからはもういつでも屋上へと上がるつもりでいた。
風の強い屋上は、寒い冬には生徒にすらも人気がなくなる。
だからここだってあたしの一人じめだったのだ。
コートを着てマフラーをぐるぐるにまいて、購買の前の自販機でホットココアを買ってから上がる日々。
屋上からは中庭の男子テニス部の練習もみれると気がついてからは、そんなに広くない屋上の上をあっちにいったりこっちにいったりして下を覗き込んだりしていた。
「・・・うううー、さっむーい!」
今日は曇り空だった。
灰色の大きくて分厚い雲が空一面を覆って、これじゃあちらりとも夕日なんて見れそうもない、そんな日の放課後。
だけどあたしは、またココアを買って階段を上る。
なんというか、習慣で。
面倒臭くて面倒臭い文化祭をようやく一昨日に終えて、学校中がこれからくる期末テストに怯えている時だった。
今日も男テニは、練習してるのかな。
それを見たかったのだ。
相変わらず教室では話せず、眠りん坊の横内と冴えない女子であるあたしの共通点は見つかりそうもない。美術部での11月の写生月間も終わってしまった今、あたしはいつでも屋上の片隅で上から彼の動くのを見詰めるだけ。