て・そ・ら


 『そんなことでどうするの~!!もう来週の男テニの試合、見にいっちゃって応援もしてこれば?』

 優実はそういってあたしを叱り付けたけれど、そんな勇気があるくらいなら屋上からストーキングしたりしないでしょ、ってなもんなのだ。クラスメイトをストーキング・・・ああ、あたしったら。

 キンキンに冷えた鉄製のドアを開けて、屋上の開けた空間へと足を踏み入れる。

 途端にかなり冷たい風がふっとんできて、あたしの全身にぶつかってきた。

「うー!」

 寒い寒い寒い寒い~!!

 つい体をぎゅうっと縮こまらせる。何なんだ~この寒さは!つい先日の文化祭では、昼間はTシャツでもいけたくらいの気温だったのに~!

 でもめげないぞ。横内をみるまでは――――――――――

 だけどそこで、人の話し声を聞いてしまった。

 え?と顔を上げるとまさかの人の姿。それも結構な数の生徒がいて、不審そうな顔でこっちを見ている。皆コートにマフラーに手袋にと完全防備だった。

 うわ、もしかして・・・。あたしがそう思ったのと、一番近くにいた一年生らしい男子生徒に声をかけられたのが同時だった。

「すみませーん、理科部で使用中でーす」

「あ、はい。・・・すみません」

 この寒いのに、ここ最近みかけなかった理科部が屋上で活動していたらしい。どうしてなのよ~実験なら化学室でしなさいよ~。

 がっくり。

 あたしは肩を落としてとぼとぼと階段を降りる。


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