て・そ・ら


 くっそー・・・部活をどうして屋上でするのよ~。もう!文句をアチコチにぶつけたかったけど、仕方ないよね。あたしは不機嫌な顔で方向をかえて、別の階段を目指した。

 部活、あたしも出よ。

 その日はだから、結局あたしの幸せな時間はなかった。そしてそのまま土日に入り、学校は休みとなる。

 冬の休み。文化祭も終わり、期末テストまでは時間があるという、全国の学生が部活をしたりバイトをしたり友達や彼氏彼女と遊んだりしているはずの、お休み。

 あたしはといえば朝から食卓で、母親の不躾な視線にさらされているところだった。

「いいーかげんに、髪を何とかしなさいよ、もう」

 さっきから母親が何回もそういってくるのだ。耳栓はないか、耳栓は?

 曰く、今年はもうちょっとでお父さんが帰ってくるらしい。うちではお正月よりも誕生日よりも、久しぶりにしか会えない父親が帰ってくる日が優先される。

 そんなわけで数日前からそわそわした母親が、自分の娘の外見を急に気にしだしたのだった。

「髪髪髪髪~!!七海ったら、おばけみたいになってるわよ~。伸ばすなら伸ばすで梳いて貰ったり色いれたりしなさいよ~」

「いや、それは校則違反ですから」

 あたしは紅茶をすすりながら小さい声で返す。

「それにお父さんはきっと気にしないと思うけど。久しぶりに会うんだから、そんな細かいことには」

「久しぶりに会うんだから、綺麗にしなさいよ!」

 ドン、とお母さんがテーブルを叩いた。おっと危ない、紅茶が揺れる・・・。


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