好きって言えよ
01
普段から突っ慳貪なあいつ
ふわりと風が舞う
あぁもう秋なんだ
夏祭りけっきょくなにも言えなかったな
ガキみたい
だってガキだもん
あいつが手をひいて鳥居をくぐって息きらして2人で神社でなに願ったっけ?
幼なじみだから小さい頃から知ってる
けど知らない
彼女いるのかな
好きな人いるのかな
訊きたいけど訊けない
「な~に考えてんの?」
ついうっかりぼーっとしてたらしい
「ごめんなんでもないよ」
「らしくないね日阪」
「そう?」
「また考えてたの?」
あいつのこと?
そりゃあ勝手に決めて勝手にアメリカに 行っちゃうんだもん
一言もなしにさ
幼なじみなのになんでかな
私は頭をぶんぶん振って考えないようにしていた
仕事仕事とパソコンに向かう
けどちらつくのはあいつ
「もう」
「休憩してきなよ」
「ごめんね宮坂くん」
「ねぇ修爾のことはちゃんと呼ぶのになんで俺は呼んでくれないの?」
えっ···
だって修爾は···いつもそばにいてくれたから
「ごめんね」
「待って」
ぐいっと手首を掴まれ廊下に連れ出された
人のいない場所まで来ると壁際に追い詰められた
「ちゃんと話して俺の目を見て」
真っ直ぐにみつめることなんてできない
宮坂くんが壁に手をついて見つめてくる
「なにやってんだよ?」
現れたのは修爾
宮坂くんを引き離して私を見る
「おまえ最低」
「えっ」
「俺のいない間に他の男にヘラヘラして
楽しいか?」
「違う」
「なにが違うんだよ」
修爾はそれ以上いわない
宮坂くんを睨みつける
「ごめん俺のせいだ」
あーもうイラつく
だんと壁を叩きつけ修爾は行ってしまった
「ごめんね宮坂くん」
私は修爾を追う
この背中、いま追いかけなきゃ届かなくなる
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