花と死(前編)
罪と輪廻
此処は人間と鬼が住む世界。
人間といっても“魔法使い”や“幽霊”、“魔女”などと種族は様々だ。
鬼もまた、様々で、“妖怪”や“鬼神”などといる。
また、神族と呼ばれる者たちがいる。
その者は“天使”“悪魔”などの種族のことを指しており、希少種である。
細かく分かれていて、それがまた混在しているため、一昔前までの差別や偏見は皆無に等しい。
だが、鬼が人間を捕食したり、その逆もあったりと物騒な世の中ではある。
鬼の種族の中でも“吸血鬼”と呼ばれる種族がいる。
一般には“血を吸い、獲物を殺す”とされているが、血を吸わない吸血鬼もいる。
——深い奈落の底で、男は蹲っていた。
息が詰まるほどに誰の声もしない空間。
地面は凍てつく氷のように冷たい。
「貴様は、戻りたいのか?」
幾度と繰り返される同じ問い。
ひたひたと近づく骸の群れ。
男は立ち上がり、拳を握る。
それは、怒りではなく、受け入れるという決意だ。
「私は、永劫に許さない。」
何度も聞いた憎悪の声。
嘗ての罪が鎖となって、足に絡む。
「終わりにしてくれ。」
願うように呟いた。
握った拳から力が抜ける。
ひらり、花弁が落ちてきて、男は天を見上げる。
暗闇には明るすぎる程の色。
様々な色の花が足元に咲く。
「もう、いいよ。」
振り向けば、白い髪の聖女が居た。
「いいえ、許さない。」
その声の方を向けば——
そこで、目が覚めた。
現実に戻ったと認識して部屋から出る。
気持ちが悪い。
だが、起床するべき時間に起きなければと身を奮い起こす。
「ウー、」
獣のように唸ると、誰かが近付いた。
「フラン。」
ヴォルフラムという名を愛称で呼ぶ女。
彼女はクラウジアという愛人だ。
「……く、クララ。」
不器用に愛称で呼び返す。
喉が焼け付くように痛い。
ずっと唸っていたということを自覚させた。
同時に、胃の底から込み上げる吐き気を感じた。
「お早う。」
クラウジアはヴォルフラムを抱き締めた。
「大好きだ。」
何の前触れもなく、そう言う。
まるで、当たり前のような表情で笑むわけでもなく言うのだ。
「ウ、ウーッ?」
その言葉に戸惑って、固まってしまった。
「ふふふ、何となく言いたくなっただけだ。」
クラウジアは悪戯に笑う。
「まだ、上手く話せないようだな。」
そう言いながら、少し前の事件を思い返した。
人間といっても“魔法使い”や“幽霊”、“魔女”などと種族は様々だ。
鬼もまた、様々で、“妖怪”や“鬼神”などといる。
また、神族と呼ばれる者たちがいる。
その者は“天使”“悪魔”などの種族のことを指しており、希少種である。
細かく分かれていて、それがまた混在しているため、一昔前までの差別や偏見は皆無に等しい。
だが、鬼が人間を捕食したり、その逆もあったりと物騒な世の中ではある。
鬼の種族の中でも“吸血鬼”と呼ばれる種族がいる。
一般には“血を吸い、獲物を殺す”とされているが、血を吸わない吸血鬼もいる。
——深い奈落の底で、男は蹲っていた。
息が詰まるほどに誰の声もしない空間。
地面は凍てつく氷のように冷たい。
「貴様は、戻りたいのか?」
幾度と繰り返される同じ問い。
ひたひたと近づく骸の群れ。
男は立ち上がり、拳を握る。
それは、怒りではなく、受け入れるという決意だ。
「私は、永劫に許さない。」
何度も聞いた憎悪の声。
嘗ての罪が鎖となって、足に絡む。
「終わりにしてくれ。」
願うように呟いた。
握った拳から力が抜ける。
ひらり、花弁が落ちてきて、男は天を見上げる。
暗闇には明るすぎる程の色。
様々な色の花が足元に咲く。
「もう、いいよ。」
振り向けば、白い髪の聖女が居た。
「いいえ、許さない。」
その声の方を向けば——
そこで、目が覚めた。
現実に戻ったと認識して部屋から出る。
気持ちが悪い。
だが、起床するべき時間に起きなければと身を奮い起こす。
「ウー、」
獣のように唸ると、誰かが近付いた。
「フラン。」
ヴォルフラムという名を愛称で呼ぶ女。
彼女はクラウジアという愛人だ。
「……く、クララ。」
不器用に愛称で呼び返す。
喉が焼け付くように痛い。
ずっと唸っていたということを自覚させた。
同時に、胃の底から込み上げる吐き気を感じた。
「お早う。」
クラウジアはヴォルフラムを抱き締めた。
「大好きだ。」
何の前触れもなく、そう言う。
まるで、当たり前のような表情で笑むわけでもなく言うのだ。
「ウ、ウーッ?」
その言葉に戸惑って、固まってしまった。
「ふふふ、何となく言いたくなっただけだ。」
クラウジアは悪戯に笑う。
「まだ、上手く話せないようだな。」
そう言いながら、少し前の事件を思い返した。