私と彼の場合
「はい」

私は、真っ直ぐに彼を見たまま、ハッキリと言った。ハッキリと言った…のに。

次の瞬間、私の唇は、彼の唇にふさがれていた。

ビックリして目を見開いたまま、唇が離れると、いつもは強い彼の目が、ほんのちょっとだけ、気弱に揺らいで見えた。

ほんのちょっとだけ…。

「オマエの大切なモノ、守ってやる」

私は、無言で頷いていた。

「今のは、誓いのキスや」

数分前まで信じられなかった彼を、信じてみようと思った。

頭をくしゃ…っと撫でる手。彼の手に、こんなにもドキドキさせられたのは、初めてかもしれない。

(おしまい)



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