Third Time Lucky
よし満足した、ここからは本腰を入れていこう。

私は集中して作業に取り組み、全て完成して本社に送ったと同時にノック音が事務所内に響いた。

「藤内さん、みんな上がりましたよ。」

葛西くんの声で時計を確認すると閉店時間をかなり過ぎていることに気付かされた。

「わっ!もうそんな時間?葛西くんも上がっていいよ、色々ありがとう。」

そう言って立ち上がると葛西くんの横をすり抜けて売り場の方へ行こうと足を進める。

「もう勤務時間外、ですよね。」

「うん。お疲れ様。」

「じゃあ、今度はちゃんと聞いてくれますよね。」

何を、そう言う間もなく影が降りかかり、開きかけていたドアが閉まる音で私の思考は動き出す。

「真面目に言いますよ?」

触れてもいないのに顔のすぐ横にある腕から体温を感じて心臓が大きく跳ねた。

これは、つまり。

「この状況、今どんな心境ですか?」

本日2度目の壁ドンだ。

同じ体勢を意味する言葉、でも1度目とは違う環境に私の感じることも違う。

葛西くんもこんなに真剣な目じゃなかった、声も掠れていなかった、腕だってこんなに力は入っていなかったと思う。

「藤内さん、答えて。」

促す葛西くんが耳元で問いかける、その距離の近さに私の思うことは1つだけだ。

「…っ恐怖!!!」

両手で思いきり押し出すと急いで逃げる為にドアノブを掴んで引こうとした。しかしそれは呆気なく葛西くんに阻まれてしまう。

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