Third Time Lucky
「ちょ…っ!」

「すみません、効果がないのはよく分かりました。もうやらないんで逃げないで下さい。」

両腕を掴んで捕らえているものの葛西くんの頭はこれ以上ない位に下がっていて彼の必死さが伝わってきた。

一体今日はどうしたというのだろう。

「なんなの…葛西くん。」

「焦ったんですよね、だから頑張ってみたんですけど。」

そこまで言うと体を起こして葛西くんは私と正面から向き合った。

いつもと違う、照れた表情が彼の言わんとすることを訴えているようで次第に私の顔も赤くなる。

「藤内さんが好きです。」

どこかで予想していたものの、直球な物言いに衝撃を受けて私は背中に壁が付くまで後ずさりしてしまった。

何てことなの。仕事に打ち込む為に封印していた気持ちが急上昇してきてしまったじゃない。

「逃げないで下さいよ。」

照れながらも苦笑いをする葛西くんに思わず謝ってしまう。

でも、だって信じられないじゃない。配属されてきてから気になっていたなんて、ずっと誰にも言わずに秘密にしてきたのに。

「クリスマス。仕事なのは知ってるけど、終わった後に一緒に過ごせないかなって思って。」

頭を掻きながらボソボソと呟く姿が可愛く見えて仕方がない。そうか、だから焦ったって言ったのか。

「まだ2ヶ月も先じゃん。」

「2ヶ月切りましたよ。」

シフトも組んでいない先の話なのに、そう思うとなんだか可笑しくなって吹きだしてしまった。

素直に、葛西くんの気持ちは嬉しく思う。

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