単純な恋。
「……透」


私の呼び掛けに西原が私を見る。


「夏海って言ってくれたから私も透って言う。
…いいよね?」


「…あぁ。…はぁ~、俺、どうすればいい?
嬉しすぎて涙出そう」


「泣かなくていいから」


「…自分はさっき泣いてたのに」


15分前の事を思い出す。
この私が人前で涙とはいつぶりだ?


「…泣いてないし…、目に睫毛が入ったの。
って、いつまで玄関にいるわけ?」


さっと立ち上がった西原に腕を取られ私も立ち上がる。


「…散らかってるけど…いい?」


西原が部屋の中を指して言った。


「言っとくけど…お茶するだけだからね」


いつもの私の口調になってた。
ナゼか西原だけには上から目線になってしまう。


「わかってるよ。お茶飲んだら送ってくから」




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