単純な恋。
「透ってこんなんが好みなんだー」


「わっっ。馬鹿っ。返せ」


私がDVDをヒラヒラさせたら慌てて取り返した。


「馬鹿って何よ?」


「男の隠したい物を堂々と見せなくてもいいだろっ」


そそくさと元の位置に戻す西原。


「ごめんねー。私、そんな胸なくて」


「これはっ。たまたま買ってみたらこんなんで…。現実にはそんなにこだわらないと言うか…」


ブツブツ言い訳する。


「現実にそんな子が透を誘惑したらクラッてするでしょ?まぁ~、男って生き物はそんなもんよね」


何、言ってんだろう私。


自分でも自分がクダラナイ事を言ってるのはわかってた。


「…俺は…夏海だけで…」

「別にいいよ。そんなこと言わなくても」


西原の言いたいことまで遮る。





「…もういい。…俺、ちょっと出てくる」


バタンとドアの閉まる音がした。










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