単純な恋。
…早く帰って来ればいいのに。


どこに行ったのよ。


掃除も終らせ、ベランダから外を見る。


近くの公園が見えた。
桜の花が5分咲きで咲いてる。




あれって…。


ベンチに座ってる男性の後ろ姿。









「掃除もしないで一人でお花見?」


「…夏海」


ベンチに座ってた西原の隣に座る。


「…まだ、怒ってる?」


西原が小動物みたいな顔で私の機嫌を伺う。


「怒って出て行ったのは透でしょう?」


ポリポリと頭を触った西原。


「…怒ってない。…俺が出て行ったのは…恥ずかしかったから。…カッコ悪いじゃん、俺」


下向いてボソボソと話す。


「…ごめん。さっきのは私が悪かった。


……あれは私の嫉妬。無いものねだりの女の嫉妬っ」



恥ずかしい――。


ベンチの端に手をつき早口で言って地面を見る。


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