雪と、キミと、私と。
目の前のダンボールから、小箱に分かれたキャンドルを取り出す。
棚に並ぶものが少量になってたらそこに足しつつ、残りは棚の上へ上げる作業を繰り返す。

……だけど、変だな。
よっぽど昨日の出来事の方が不気味で逃げ出したくなるようなことなのに。
やっぱり……昨日の人は、なんか違う……。

「わぁ!雪!」

お客さんの歓喜の声で、つい気が逸れてしまった。
横着して、チビなのに踏み台も使わずにぴょんぴょん飛んで棚の上にしまっていた罰が当たったんだ。
窓に顔を向けた瞬間。自分の指先に、箱が一気に押し寄せる嫌な感触を感じ取ると、目を閉じた。

――ああ、マズイ。割れ物ではなかったけど、キャンドルだって変形したり割れてしまうものだ。
今入荷したばかりのモノをダメにしてしまうなんて……。

「大丈夫?」

固く閉じていた目をゆっくりと開く。
ぼやける視界に入った人が、徐々にクリアに見えて――。

「な、んで」

自分に降りかかるであろう衝撃もなく、足元にも無残な姿のキャンドルはひとつもない。

「これ、上にあげるの?」

私の背中から、長い腕を伸ばして軽々と棚の上に落ちるはずだった箱を収納する。
覆いかぶさられるように背後で密着されると、すごくすごく恥ずかしい。――でも、やっぱり嫌じゃない。
その近い距離のまま遠慮がちに見上げると、昨日の人が笑ってる。

「昔、似たようなことあったよね。あの時は逆だったけど」
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