雪と、キミと、私と。
わからなくて、困った顔をしていたら彼は短い溜め息を吐いて窓の外を見た。

「雪。こっちは少ないってホントだね」

チラチラと今にも見えなくなりそうな程の、小さな雪の粒。
私も彼と同じ方向に視線を向けながら、ひとつの記憶が蘇る。

『あぶないっ』

そう叫んだのは、小さい頃の私。
ずっしりと積もった枯れ木の雪が突然落ちてきたのを、咄嗟に私が庇った。

『早雪ちゃん、だいじょうぶ?』
『うん。祥吾は?』
『ヘーキ!』

「……祥吾?」

遠くに見える雪から視線を先に戻してたのは、祥吾だった。

「大学。こっちのに決めたから」

知らない間に男の人になってた、5つ下の祥吾。
まさか、こんなふうに私に会いに来るなんて――。

「びっ……くり。昨日だって……!」

再会した後のことを思い出すと、私の心は昔とは違う彼に反応し始める。

騒ぐ心臓を抑えるように一歩後ずさる。
色とりどりのクリスマスグッズが並ぶ棚を背負う私に、祥吾はゆっくりと手を伸ばす。

なにか手に取るのかと思ったら、そうじゃなくて。棚に『トン』と優しく手を置いた。
背の高くなった祥吾は、にっこりと私を見下ろす。

「これで今度から俺が早雪ちゃんを守れるね」

この突然の甘い状況に、赤い顔で固まった顔を店内の人たちに見られちゃう。

――だから、お願い。まだ、降り止まないでいて。


おわり
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