きみと駆けるアイディールワールド―赤呪の章、セーブポイントから―
「あ、アンタたちは、ピアズ、どうなの? どれくらい、やってるの? レ、レベル自体は、かなり、低いみたいだけど」
「オレたちは、まあ、四ヶ月ってとこかな」
「ええっ? う、うそっ?」
「うそじゃねえよ。てか、ニコルのパラメータ、チラッと見てたろ?」
「レベルだけは見たけど。言われてみれば、確かに、四ヶ月……でも」
「なんなら、プレー履歴、しっかり見せようか? ハイエストクラスのステージは、これで二つ目だ」
「そんな短期間でここまで来たなんて、信じらんない」
アタシがハイエストに来るまでに、半年以上かかったのに。
「いや、だって、オレたち、一人じゃねえから。オレとニコルは最初からピアを組んでるんだ。お互いのスキルを活かし合いながら進めてきた」
言い訳するみたいなラフの口調に、アタシも気を取り直した。いや、まだ釈然としないんだけど。
「スキルって? ニコルは完全に補助系の便利屋だけど。アンタも何か特殊なことができるわけ?」
ラフは、あのムカつく笑顔をつくった。
「焦るなよ。おっつけ披露していくさ。といっても、お姫さまほどの手数は持ってないぜ。お姫さまは、配信されてるスキル、全部ゲットしてるんだろ。その貧乳戦士体型で修得できるやつ、全部」
「アンタ失礼すぎる! スピード重視の戦士タイプよ。ひ、貧乳とか言わないで! スキルなら全部キッチリ持ってるわ。そんなの当然でしょっ」
「当然と言うかねぇ? 保有数マックスまでスキルを持ってるユーザって、国内でも片手の指で数えられると思うけど」
「アタシにとっては当然なのよ」
「サイドの作業クエで頑張ってるってことか」
スキル修得のためのシングルクエスト、通称、作業クエスト。オンライン本編じゃなくて、オフラインのサイドワールドに用意されてる修行モードだ。
作業クエストでのスキル修得は効率が悪い。オンライン本編のほうが、経験値以外にもいろいろボーナスがあるから、レベルアップもスキル修得も圧倒的に早い。
「好きなのよ、作業クエ。集中してたら、時間を忘れる」
「シャリンの『中の人』って女だよな?」
「は?」
「いや、なんというか、作業クエで黙々と複雑なコマンド入力に集中し続けるとか、そんなん好きなのって、だいたい男じゃん?」
「アタシのことオカマだっていうのっ? 女に決まってるでしょ!」
「んー、まあ知ってるけど」
「なんで、何を、知ってんのよ!」
「さあね」
ラフは、一文字傷のある右頬で笑ってみせた。アタシの髪の一房に、ひょいと触れる。
「ちょっとっ」
「キレイな色だな」
「許可なく話をそらさないで!」
「いいじゃん。女の子を誉めるのに、いちいち許可も必要ねぇだろ?」
「話が中途半端になるのが気持ち悪いのよ!」
「じゃあ、さっきの作業クエの話は終了。黙々と修行しまくってきたから、今のお姫さまの強さがあるってことで、オレは納得した。これでOK?」
「……OKってことにしてあげるわ」
「サンキュ。今みたいに、どういう会話の組み立て方がOKとかNGとか、ズバッと言ってくれよな。っつっても、お姫さまの考え方はどうやらロジカルなタイプみたいだから、けっこうやりやすいぜ」
アタシは驚いた。アタシの考え方も性格も、面倒くさいって言われることしかないのに。
ラフは改めてアタシの髪の色を誉めて、どこで入手したのかを訊いてきた。アタシは誘導されるように答える。
「コロシアムで勝ち抜いて手に入れた限定カラーよ。持ってる人間は相当少ないはずだわ。アタシの髪は、もとは赤毛だったんだけど」
「シャリンには、赤よりこっちのほうが似合いそうだ」
「そ、そういうナンパな言動はやめなさいよ。いい加減にして。ぶっ飛ばされたい?」
ペースを乱されて、アタシは本気で戸惑った。
「オレたちは、まあ、四ヶ月ってとこかな」
「ええっ? う、うそっ?」
「うそじゃねえよ。てか、ニコルのパラメータ、チラッと見てたろ?」
「レベルだけは見たけど。言われてみれば、確かに、四ヶ月……でも」
「なんなら、プレー履歴、しっかり見せようか? ハイエストクラスのステージは、これで二つ目だ」
「そんな短期間でここまで来たなんて、信じらんない」
アタシがハイエストに来るまでに、半年以上かかったのに。
「いや、だって、オレたち、一人じゃねえから。オレとニコルは最初からピアを組んでるんだ。お互いのスキルを活かし合いながら進めてきた」
言い訳するみたいなラフの口調に、アタシも気を取り直した。いや、まだ釈然としないんだけど。
「スキルって? ニコルは完全に補助系の便利屋だけど。アンタも何か特殊なことができるわけ?」
ラフは、あのムカつく笑顔をつくった。
「焦るなよ。おっつけ披露していくさ。といっても、お姫さまほどの手数は持ってないぜ。お姫さまは、配信されてるスキル、全部ゲットしてるんだろ。その貧乳戦士体型で修得できるやつ、全部」
「アンタ失礼すぎる! スピード重視の戦士タイプよ。ひ、貧乳とか言わないで! スキルなら全部キッチリ持ってるわ。そんなの当然でしょっ」
「当然と言うかねぇ? 保有数マックスまでスキルを持ってるユーザって、国内でも片手の指で数えられると思うけど」
「アタシにとっては当然なのよ」
「サイドの作業クエで頑張ってるってことか」
スキル修得のためのシングルクエスト、通称、作業クエスト。オンライン本編じゃなくて、オフラインのサイドワールドに用意されてる修行モードだ。
作業クエストでのスキル修得は効率が悪い。オンライン本編のほうが、経験値以外にもいろいろボーナスがあるから、レベルアップもスキル修得も圧倒的に早い。
「好きなのよ、作業クエ。集中してたら、時間を忘れる」
「シャリンの『中の人』って女だよな?」
「は?」
「いや、なんというか、作業クエで黙々と複雑なコマンド入力に集中し続けるとか、そんなん好きなのって、だいたい男じゃん?」
「アタシのことオカマだっていうのっ? 女に決まってるでしょ!」
「んー、まあ知ってるけど」
「なんで、何を、知ってんのよ!」
「さあね」
ラフは、一文字傷のある右頬で笑ってみせた。アタシの髪の一房に、ひょいと触れる。
「ちょっとっ」
「キレイな色だな」
「許可なく話をそらさないで!」
「いいじゃん。女の子を誉めるのに、いちいち許可も必要ねぇだろ?」
「話が中途半端になるのが気持ち悪いのよ!」
「じゃあ、さっきの作業クエの話は終了。黙々と修行しまくってきたから、今のお姫さまの強さがあるってことで、オレは納得した。これでOK?」
「……OKってことにしてあげるわ」
「サンキュ。今みたいに、どういう会話の組み立て方がOKとかNGとか、ズバッと言ってくれよな。っつっても、お姫さまの考え方はどうやらロジカルなタイプみたいだから、けっこうやりやすいぜ」
アタシは驚いた。アタシの考え方も性格も、面倒くさいって言われることしかないのに。
ラフは改めてアタシの髪の色を誉めて、どこで入手したのかを訊いてきた。アタシは誘導されるように答える。
「コロシアムで勝ち抜いて手に入れた限定カラーよ。持ってる人間は相当少ないはずだわ。アタシの髪は、もとは赤毛だったんだけど」
「シャリンには、赤よりこっちのほうが似合いそうだ」
「そ、そういうナンパな言動はやめなさいよ。いい加減にして。ぶっ飛ばされたい?」
ペースを乱されて、アタシは本気で戸惑った。