きみと駆けるアイディールワールド―赤呪の章、セーブポイントから―

□海死神《カナロア》の星

 アタシたちは折り重なるようにして砂浜に倒れてたらしい。朝、村人たちが漁に出るとき、アタシたちを見付けたんだって。
 すぐさま、村の巫女、ヒナが呼ばれてアタシたちの正体を占った。
「見慣れぬ風体のかたがたですね。ですが、村に害を及ぼす存在ではありません」
 だから、アタシたちは長の家へ運んで介抱された。武器も所持品も取り上げられずにすんだ。
 ストーリーを進めることにする。
 ニコルはお芝居みたいなお辞儀をした。
「皆さまのご親切、本当に感謝します」
 相手はAIなのに、わざわざこんなことするのよね。変なヤツ。
 長は、髪も髭も白いおじいさんだった。とはいっても、筋肉ムキムキで、足腰もしゃんとしている。
 長の隣に控えた男は、カイと名乗った。長の末息子だって。ガッシリ系の、まあまあイケメンキャラ。タイプじゃないけど。
 ラフとニコルがきょろきょろして、村の様子を観察した。
「なんか、雰囲気がものものしいな」
「そうだね。戦でも始まるのかな?」
 村の男たちの顔や体には、紋様が描かれてる。フアフアの村の人たちもそうなんだけど、紋様はホヌアの呪術に欠かせないもので、神々《アクア》の力を呼び込むため、体じゅうに描いたり刻んだりしている。
 男たちはみんな、木とサメの歯を組み合わせた武器を持っていた。そして、南国の青空に似合わない沈んだ顔をしてる。
 カイが進み出て、アタシたちの姿を上から下まで観察した。
「オマエたちも武人か? 腕は立つのか?」
「はい、そうですよー」
「ならば、手合わせ願えるか?」
「おう、やってやろうじゃん」
 カイは満足そうに笑った。長である父親に向き直る。
「父上、彼らの腕を見たい。彼らが村の者よりも強いならば、クーナ退治にはオレと彼らで当たりましょう」
 村の男たちがどよめいた。三十人くらいいるけど、長やカイと違ってやせ型で弱そうだ。そのうちの一人、カイの友達っぽいキャラが口を開いた。
「よそ者にヒナの命運を預けて、アンタは納得できるのかい? そりゃあ、オイラたち漁夫じゃあ戦力なれないよ。でも……」
「よそ者だろうがなんだろうが、戦士がここにいる。これは天地万物の神のご意向、祖先の御霊の思し召しだ。ヒナのために、必ずクーナを討ち取らねばならない」
 やせた男たちは顔を見合わせて、うなずいた。
 ニコルがアタシとラフに確認した。
「次のセリフをスクロールさせたら、バトルスタートみたい。ザコキャラ三十人、任せちゃっていい? ここでスタミナ消費したくないから」
「おう、任せとけ。な、お姫さま?」
「そうね。殺しちゃったらペナルティよね? 素手でやるわ」
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