きみと駆けるアイディールワールド―赤呪の章、セーブポイントから―
 ホヌアの中央台地の北側に、高い山がある。山頂は雲を突き抜けていて見えない。ホヌアは暖かい気候だけど、山の頂上だけは雪に閉ざされてる。
 ここで例によって、雑学王ニコルによる解説。
「やっぱりホヌアのモデルはハワイ島だね。ハワイ島にはキラウエア火山があって、すばる望遠鏡が設置された雪山、マウナケアもあるんだ。すばる望遠鏡は雲より上に設置されててね、雲に邪魔されないから、いつでもクリアな視界で観測できるんだよ」
 最後のホクラニは「農神《ロノ》の星」。ホヌアの雪を統べる女神ポリアフが持ってるらしい。ホクラニ回収がヒイアカからのミッションで、ラフが付け加えたシナリオはここから先だ。
「今回はオレにも目的がある。目的を遂げるために、竜を倒さなきゃならない。銀剣竜ケアってのが、この万年雪の山頂に棲んでる。ケアは『ポリアフの剣』と呼ばれる宝剣を守ってるんだ。オレはその剣をケアからぶんどりたい」
 ラフはマップを表示させて、雪山のてっぺんを指差した。そこが目的地なんだ。ニコルが途中の道を確認する。
「まず、中央台地の荒野を東へ突っ切る。それから、北へ方向転換。で、雪山を登っていくルートだね」
 けっこうな長旅になりそうなのが、この際、ありがたい。だって、手こずるぶんだけ、ラフやニコルと一緒にいられる。
 だけど、そもそもどうしてこのステージ限定なんだろう? アタシがピアを作ることを渋ったから? だったらもう、そんなの関係ないのに。
 アタシはラフに質問した。
「どうしてポリアフの剣を狙うの? そんなにスペックの高い剣?」
「スペックがどうこうっていうより、この呪いをどうにかできる可能性があるから」
「呪いを?」
「まあ、氷系スキルが自動的に発動する宝剣だよ。持っといて損はないしな。こんなシナリオだけど、協力してくれる?」
 黒い瞳がアタシを見つめる。胸がざわめく。このミッションで最後だなんて。
 心臓がギュッとなって、気付いたら、アタシは口走っていた。
「いいわよ、協力してあげる。そ、その代わり、条件があるわ」
「なんだ?」
「次のステージでも、アンタたちのピアでありたい」
「え?」
「で、でも、あの……あ、アタシは一人で、だ、大丈夫だし。だから、あ、アンタたちの、気が向いたら」
 ラフもニコルもハッキリとは返事をしてくれなかった。どうして? でも、アタシもそれ以上は何も言えなくて。
「ラスト、買い物行っておこうよ!」
 ニコルの提案に乗っかって、アタシたちはにぎやかなショッピングエリアへ繰り出した。
< 67 / 88 >

この作品をシェア

pagetop