きみと駆けるアイディールワールド―赤呪の章、セーブポイントから―
■普通の出会い
朝ごはんを食べながら、朝綺はちょっとだけ、かしこまった。
「じゃあ、改めまして、自己紹介させてもらうけど。飛路朝綺、二十一歳。職業は、まあ一応、ゲームレビュアみたいなことをやってる。界人は、おれにとって、響告大学の一年先輩で、一年後輩でもある。年齢はおれのほうが四つ若いけどな」
ちょっと待って。いろいろ計算が合わないんだけど?
おにいちゃんが補足した。
「つまり、朝綺は何度も飛び級してるんだ。朝綺は、麗と同じ特異高知能者《ギフテッド》なんだよ。ぼくが大学二年に上がるときに十五歳で入学してきて、二年で大学を卒業していった」
朝綺は自己紹介を続けた。
「サークルでは、界人とおれでペアを組んでゲームを作ってた。工学部の研究室も同じだった」
「研究室の序列では、朝綺がぼくの先輩って扱いなんだよな」
「でも、ネットの人物事典では、違うだろ。おれたちは同期生ってことになってるぜ」
あたしは思わず、ティーオーレを噴き出しそうになった。
「人物事典? おにいちゃんが載ってるの?」
「あれ、麗ちゃんは知らなかった?」
またしても息が止まりかけた。「麗ちゃん」って、そんな急に、いきなり呼ばないでよ。お姫さまって呼ばれると思ってたのに。
あたしはしどろもどろになって、朝綺に答えた。
「ぜ、全然、聞いたことも……」
朝綺はロボットアームでおにいちゃんをつついた。
「ほら、界人。ちゃんと教えてやれよ」
「んー、載っちゃってるんだよな。ぼくはたいしたことしてないのに」
「たいしたこと、してるだろ? おれひとりじゃ、ストーリー校正もCGもキャストも無理なんだぜ」
おにいちゃんは、恥ずかしそうに白状した。
「朝綺とぼくの共同の名義で、いくつかのゲームのライセンスを持ってるんだ。昔使ってたハンドルネームだから、麗は知らないと思うけど」
ゲームのライセンス? おにいちゃんって、そんなに本格的に、ゲーム作ってたの?
「初耳よ。いくつかのゲームって、例えば?」
おにいちゃんが、朝綺に視線を送った。朝綺が、答えた。
「ハコ型のが十二個で、全部RPG系。でも、最大のメガヒットはオンラインRPG『PEERS' STORIES《ピアズ・ストーリーズ》』だな」
「ええぇぇぇっ? ピアズ? う、うそっ!」
「ほんと。うそじゃねえよ」
朝綺は、軽ーい感じで笑ってみせた。
あたしは頭が真っ白になっている。めまいがしそう。
ああ、でも、なるほどって気もしてきた。思い返せば返すほど、ラフが開発者なんだって言われて納得できる。
「じゃあ、全部、二人のアイディアなのね? あの音ゲーもどきのめんどくさいバトル様式とか、古典的な剣と魔法のRPG仕立てとか、シナリオの持ち込みが可能なこととか」
「死の概念をユーザサイドから排除しちまったこととか、ね」
あたしは額を押さえた。頭痛がする気がしてるのと、顔を隠したいのと、両方。
「ピアズが古典RPGっぽいのは開発者の趣味だって噂、聞いたことあったの。だから、開発者は年寄りだとばっかり思ってたわ。リアルタイムで古典ゲームやオンラインゲームをやってたような」
「当時、おれたちは響告大の学生でした。意外?」
「意外よ。ほんと、信じらんない」
旅の仲間がおにいちゃんとその親友だった。それだけで、十分に衝撃的だったのに。まさかその二人が、ピアズの開発者でもあったなんて。
「じゃあ、改めまして、自己紹介させてもらうけど。飛路朝綺、二十一歳。職業は、まあ一応、ゲームレビュアみたいなことをやってる。界人は、おれにとって、響告大学の一年先輩で、一年後輩でもある。年齢はおれのほうが四つ若いけどな」
ちょっと待って。いろいろ計算が合わないんだけど?
おにいちゃんが補足した。
「つまり、朝綺は何度も飛び級してるんだ。朝綺は、麗と同じ特異高知能者《ギフテッド》なんだよ。ぼくが大学二年に上がるときに十五歳で入学してきて、二年で大学を卒業していった」
朝綺は自己紹介を続けた。
「サークルでは、界人とおれでペアを組んでゲームを作ってた。工学部の研究室も同じだった」
「研究室の序列では、朝綺がぼくの先輩って扱いなんだよな」
「でも、ネットの人物事典では、違うだろ。おれたちは同期生ってことになってるぜ」
あたしは思わず、ティーオーレを噴き出しそうになった。
「人物事典? おにいちゃんが載ってるの?」
「あれ、麗ちゃんは知らなかった?」
またしても息が止まりかけた。「麗ちゃん」って、そんな急に、いきなり呼ばないでよ。お姫さまって呼ばれると思ってたのに。
あたしはしどろもどろになって、朝綺に答えた。
「ぜ、全然、聞いたことも……」
朝綺はロボットアームでおにいちゃんをつついた。
「ほら、界人。ちゃんと教えてやれよ」
「んー、載っちゃってるんだよな。ぼくはたいしたことしてないのに」
「たいしたこと、してるだろ? おれひとりじゃ、ストーリー校正もCGもキャストも無理なんだぜ」
おにいちゃんは、恥ずかしそうに白状した。
「朝綺とぼくの共同の名義で、いくつかのゲームのライセンスを持ってるんだ。昔使ってたハンドルネームだから、麗は知らないと思うけど」
ゲームのライセンス? おにいちゃんって、そんなに本格的に、ゲーム作ってたの?
「初耳よ。いくつかのゲームって、例えば?」
おにいちゃんが、朝綺に視線を送った。朝綺が、答えた。
「ハコ型のが十二個で、全部RPG系。でも、最大のメガヒットはオンラインRPG『PEERS' STORIES《ピアズ・ストーリーズ》』だな」
「ええぇぇぇっ? ピアズ? う、うそっ!」
「ほんと。うそじゃねえよ」
朝綺は、軽ーい感じで笑ってみせた。
あたしは頭が真っ白になっている。めまいがしそう。
ああ、でも、なるほどって気もしてきた。思い返せば返すほど、ラフが開発者なんだって言われて納得できる。
「じゃあ、全部、二人のアイディアなのね? あの音ゲーもどきのめんどくさいバトル様式とか、古典的な剣と魔法のRPG仕立てとか、シナリオの持ち込みが可能なこととか」
「死の概念をユーザサイドから排除しちまったこととか、ね」
あたしは額を押さえた。頭痛がする気がしてるのと、顔を隠したいのと、両方。
「ピアズが古典RPGっぽいのは開発者の趣味だって噂、聞いたことあったの。だから、開発者は年寄りだとばっかり思ってたわ。リアルタイムで古典ゲームやオンラインゲームをやってたような」
「当時、おれたちは響告大の学生でした。意外?」
「意外よ。ほんと、信じらんない」
旅の仲間がおにいちゃんとその親友だった。それだけで、十分に衝撃的だったのに。まさかその二人が、ピアズの開発者でもあったなんて。