俺は俺だから
「‥‥なんか悩んでる?」
一瞬、動きがとまった。
自分でもびっくりした。
「‥‥悩んでないし。超健康、超ピンピン!」
『超ピンピン』ってなんだよ!
ムキになって答えちゃった。
したら、そいつ、『そかそか、よかった〜』とかって爆笑してるし。
悔しいから、そのまま無視して帰ろうとした。
「あぁ、笑った‥‥て、おい! 送る!」
送るだあ?!
馴々しいっっ!
こーゆー軽い奴嫌なんだよ!
「や、くんな」
即答で拒否るあたし。
「んなっ?! 人がせっかく親切でやってんのに」
「親切なんていらねーよ」
「おまっ! 罰当たりな!」
「当たってもいーし」
「馬鹿野郎!」
なんかムキになってきたそいつ。
あたしも負けじと冷たくする。
もー、永遠に続きそーな口喧嘩状態。
あんなに声出したのはいつぶり?
あたしのペースは、完全にそいつのペースに。
歩きながらだったから、気が付いたら家の前まできてた。
だあー、最悪。
家知られちゃった。
と思ったけど
「あぁ、俺超方向音痴だし、家とかバレても道忘れるからそのへん大丈夫★」
とかそいつが言うから安心した。
嘘か?と思ったけど、ずっと話してた(つか喧嘩してた)から
こいつは嘘つかないって、なんとなくわかった。
「ありがと」
とりあえずお礼。
一応送ってくれた?し。
「おー。 ‥‥俺は一悟!」
はっ?!
予想外の自己紹介。
‥‥イチゴ?
変な名前。
「苺?」
「発音違う! 一悟!」
「はいはい。あたし那智。」
発音とかどーでもいーよ。
「わかった。んじゃな、“アチ”!」
?!
“アチ”って誰?!
「違うから! “那智”!」
聞こえたのか、聞こえてないのか。
一悟‥‥はそのまま暗やみの中に消えてった。
ほんとにあいつ、送るだけだったな。
これが、あたしの親友第一号との出会いだったりする。