女子力高めなはずなのに
「……後で怒るなよ」

「!」

一瞬フワッと横抱きに抱えられたと思ったら、そっと柔らかく包まれた。


……私、抱き締められてる?

温かい。

井川さんの体は大きくて、包まれた感触が心地よくて、ふっと力が抜けた。

「もう怖くない、大丈夫だよ」

「……」


なんだろう、すごく安心する。

胸に頬を寄せたら、シャツの向こうの温かい体を感じた。


このままでいて。

このまま温かく包んでいて。

目を閉じて、息を吐いて体を預けたら、意識がゆっくり遠退いた。

優しい闇に落ちていくのを感じながら。
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