女子力高めなはずなのに
他の子たちと同じような格好をできるだけで、すごく嬉しかったし。

冬寒くないだけでありがたかったし。

みんなと同じ文房具を買ってもらえるなんて、とてつもない贅沢に思えた。

保護者としてお兄ちゃんが背後にチラつくからいじめられることもなかったし。

お兄ちゃんだって遊んだりしたいはずなのに、いつも私を優先してくれて。

私は、お父さんとの生活から救い出してくれたお兄ちゃんに大事にされるだけで、もう本当に十分だった。


ある日お兄ちゃんは、私がお兄ちゃんに見捨てられることを怖れて気を使っていることに気がついて、ものすごく怒った。

さくらの大バカ!

さくらが気を使わなくても、さくらが何をしても俺は捨てたりしない。

そんなつもりで一緒にいるわけじゃない。

俺のことそんな男だと思ってたのか?

理由なんてないよ。

家族なんだから、お兄ちゃんなんだからそれでいいだろって。

お兄ちゃんはそう言った。

あの時、私は初めて大泣きした。

私は、ただここに存在してもいいとあの時初めて知った。
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