女子力高めなはずなのに
私は働いて帰ってくるお兄ちゃんのために一生懸命料理を覚えた。

「うまい」って言ってもらえるのがすごく嬉しかった。

私の初恋の人がお兄ちゃんじゃないことにふてくされたお兄ちゃんも、なんだか面白かった。

バレンタインの時、毎年チョコレートをプレゼントすると嬉しそうに受け取って、欠けた歯で笑うお兄ちゃん。

お兄ちゃんは、兄ではなく父のような存在だったと思う。

その頃から付き合っていた美鈴さんもすごく良くしてくれた。

あの楽しくて愛情の詰まった幸せな6年間は私の宝物。

私が自分の心を見つけた6年間。


でも、私はお兄ちゃんのお荷物になるのが嫌で、高卒で就職して一人暮らしを始めた。

そして就職してから、高校まではしなかったお化粧とかおしゃれをするようになった。
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