女子力高めなはずなのに
最初は社会人としての身だしなみとして始めたんだけど、そのうちだんだん化粧をしていないと、私なんて表を歩いちゃいけないような気がしてきた。

たぶん私は、自分に自信がない。

私の根底には、お父さんと暮らした6年間がどうしてもあって、見捨てられる恐怖がいつも心のどこかに潜んでいる。

何かしないと存在できない。
何かしないと認められない。

いつもそんな気持ちに追い立てられている。

だから、付き合った人には尽くし過ぎてダメになる……。

お兄ちゃんとの生活で、私はなんとか人並みになることができた。

あとは私も幸せを掴んで、お兄ちゃんを安心させてあげたいんだけど。


お兄ちゃんは、私が就職して少ししたら美鈴さんと結婚して、なかなか子どもができなかったけれど、やっと健太君が生まれた。

幸せな家庭を築いたお兄ちゃん。

お兄ちゃんは私の恩人。

眉毛がなくて歯の欠けた私の大好きなお兄ちゃんのおかげで、今の私はここにいる。
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