女子力高めなはずなのに
美鈴さんはにっこり笑った。

「さくらちゃんはそのままでいいのよ」

「え?」

「そのままのさくらちゃんが一番いいのよ。無理にいい子にならなくていいんだから」

その言葉には、胸の奥を掴まれた気がした。

なんだか涙がにじんでくる。

私より5つしか年上じゃないのに、美鈴さんはお母さんみたいだ。

「さくらちゃんはもちろん綺麗な子だけど、それだけじゃなくて、本当のさくらちゃんの良さを分かってくれる人と幸せになってほしいな」

美鈴さんに綺麗だなんて言ってもらえるのはすごく嬉しいけど。

私の良さを分かってくれるなんてそんな人、いるのかな。

だいたい、本当の私の良さってなんだろう?

本当の私?

……井川さんと一緒にいると、どういうわけか素の私になってしまうけど。

でも……。

あー、もう。

忘れよう、忘れようと思っているのに、どうしても井川さんのことを考えてしまう。

もう、重症だ。

うつむいたら、頭をポンッと叩かれた。

「もうっ!煮え切らないっ!」

美鈴さん?

「行けそうならガンガン攻めて、ダメならダメでさっさと諦めて次の素敵な恋を探しなさい!さくらちゃんもう30なんだから!」

「ハ、ハイッ……!」

腕組みをして正面からムウッと睨む美鈴さん。

あんまりウジウジすると、美鈴さんは痺れを切らせることが分かった……。
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